辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
不安げにこちらを見るノーラに対し、サリーシャはこてんと首を横にかしげて見せた。随分と信用がないものだと思わず苦笑してしまう。しかし、マリアンネが来たここ最近で二回も行方不明事件を起こしたサリーシャに、文句は言えない。
ノーラが立ち去ったあと、サリーシャは再び本を読み始めた。巡業の歌劇団の看板俳優と貴族令嬢の禁断の恋を描いたその小説は、とても切ない悲恋の話だ。ヒロインに感情移入して夢中になって読んでいると、木々の葉が鳴る音や小鳥の囀りにまじり、カツンと石畳を鳴らす音がした。
「ノーラ、早かったわね?」
視界の端の足元に自分とは違う影が映り、サリーシャは本の文字に視線を向けたまま声をかけた。しかし、返事がない。訝しく思ったサリーシャは、ようやく本から顔を上げた。
「マリアンネ様……」
サリーシャは自分にしか聞こえないような小さな声で呟く。そこには、いつの間にか目の前に立ち、険しい表情でこちらを見下ろすマリアンネがいた。
ノーラが立ち去ったあと、サリーシャは再び本を読み始めた。巡業の歌劇団の看板俳優と貴族令嬢の禁断の恋を描いたその小説は、とても切ない悲恋の話だ。ヒロインに感情移入して夢中になって読んでいると、木々の葉が鳴る音や小鳥の囀りにまじり、カツンと石畳を鳴らす音がした。
「ノーラ、早かったわね?」
視界の端の足元に自分とは違う影が映り、サリーシャは本の文字に視線を向けたまま声をかけた。しかし、返事がない。訝しく思ったサリーシャは、ようやく本から顔を上げた。
「マリアンネ様……」
サリーシャは自分にしか聞こえないような小さな声で呟く。そこには、いつの間にか目の前に立ち、険しい表情でこちらを見下ろすマリアンネがいた。