辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャはキッとこちらを睨み付けるマリアンネを呆然と見返した。騙すとか技とか、全く身に覚えがない。マリアンネは怒りからか、扇を持つ手が震えていた。サリーシャは目の前の人から半ば憎悪に近い感情を感じて、にわかに恐怖心を覚えた。
「申し訳ありませんが、仰る意味がわかりませんわ。わたくしは、なにもしておりません」
「嘘よ! わたくしの方が身分も上で、美しさだってけっして負けてはいないわ。結婚したときのメリットだって大きい。なのに、なんで! なんでよ!?」
そこまで一気にまくし立てたマリアンネは、サリーシャを軽蔑するように目を細めた。
「どうせ、あなたはフィリップ殿下の愛人だったのでしょう? そうでなきゃ、平民上がりが殿下にお近づきになれるわけがないわ。ねえ、セシリオ様も体をつかって取り入ったの? セシリオ様はあなたに騙されてるのよ。平民上がりの癖に、当然のように殿下の隣に陣取った厚顔無恥な女のくせに!」
「わたくしはなにもしておりませんっ! 殿下とも、そのような関係ではありません!!」
大きな声で言い返したサリーシャのことを、マリアンネは不思議なものでも見るかのような目で見つめた。しばし人形のように表情を消していたが、今度はぱぁっと表情を明るくした。そして、片手の人差し指を口元にあて、コテンと首をかしげた。