辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 二階の廊下に面したドアを開けると、セシリオは空いている方の腕で部屋の中を指し示した。

 サリーシャは中に入ると、部屋を見渡した。
 客間というだけあり、遠方から来た来客を宿泊させるための部屋なのだろう。華美な装飾はないものの、部屋の中央に大きなベッドがあり、窓際には一人掛けソファーが二脚、丸テーブルに向かって置かれている。シンプルにまとまった調度品は落ち着いた雰囲気を(かも)し出していた。

「なにか不足があれば遠慮なく言ってくれ」
「はい、ありがとうございます。これでも十分すぎるほどですわ」

 それを聞いたセシリオは柔らかく目を細めて微笑んだ。

「なら、よかった。──では、晩餐のときに。それまではゆっくりするといい」
「はい」

 ドアがパタンと閉められると、とたんに部屋には静寂が訪れる。
 サリーシャは目の前にあったベッドにポスンと腰を下ろした。十一日間もほぼ馬車の中に缶詰状態の長旅。一人になるとどっと疲れが押し寄せた。

 少しだけ。そう思って横になると、いつの間にか深い眠りの世界へと誘われた。

< 46 / 354 >

この作品をシェア

pagetop