政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「久しぶりだな」

「はい、お久しぶりです」

 距離を縮めながら挨拶を交わす。そして目の前で足を止めた私に、伯父は片眉を上げた。

「こんな遅い時間まで瑠璃に会いに行っていたのか?」

「はい」

「瑠璃のためなのはわかるが、千波はもう少し自分の身体を労わるべきだ。明日も仕事なんだろう? お前が無理して倒れでもしたら瑠璃が悲しむだけだ」

「……はい、気をつけます」

 伯父は私のことを考えて言ってくれているとわかってはいるけれど、声や口調が冷たくて叱られている気分になる。

「話がある、家に上がってもいいか?」

「あ、はい。もちろんです」

 慌てて家の鍵を手に取り、ドアの前へと急ぐ。伯父も私の後をついてきた。

「どうぞ」

 鍵を開けて伯父を招き入れ、急いでお茶の準備に取りかかる。

「いいぞ、気を遣わなくて」

「いいえ、そういうわけにはいきません」

 急須から湯呑にお茶を注ぎ、テーブルに湯呑を並べ、伯父と向かい合う形で腰を下ろした。

 伯父がこうして連絡ナシに訪ねてくることは滅多にない。話っていったいなんだろうか。

 淹れたてのお茶を飲む伯父の様子を窺う。
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