政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「なにかの冗談ですよね?」

「私も最初は間違いだと思ったさ。だが、どうやら向こうは本気で千波と結婚したいようだ」

 会ったこともない私と結婚したいなんて嘘でしょ? それともどこかで会ったことがあるとか? ううん、そんなわけがない。そんな人と会ったら絶対に覚えているはずなのに、記憶にないもの。
 じゃあどうして私なんかと結婚したいなんて言ってきたのだろうか。

 答えの出ない問題に頭を悩ませていると、伯父が真剣な瞳で私を見つめた。

「本来なら断りたいところだが、相手が相手だけにそういうわけにもいかない。……申し訳ないが千波、会うだけ会ってきてくれないか?」

 たしか伯父は、庵野不動産会社の下請け会社で働いていたはず。立場上、断れるわけがない。それに父が蒸発してからというもの、伯父にはなにかとお世話になっている。

 このアパートを借りる際も保証人になってくれたし、未成年の私に代わって瑠璃の保護者として病院で様々な手続きもしてくれた。

 なにより私ひとりの稼ぎでは毎月借金返済だけで生活費がなくなってしまうため、借金返済のための一部を立て替えてくれている。そんな伯父の頼みを私に断れるはずがない。
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