政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「わかりました、会ってきます」

「本当か?」

「はい。どんな理由があって私と結婚したいとおっしゃったのかわかりませんが、到底私なんかが釣り合う相手ではありません。会えば向こうも理解してくれると思います」

 そもそも借金を抱えている私と結婚したって、相手にはなんのメリットもない。お金持ちのただの気まぐれなのかもしれない。だったら一度会えば気が済むだろう。

「すまない、不甲斐ない伯父で」

 申し訳なさそうに頭を下げる伯父の姿に、慌てて言った。

「なに言ってるんですか、伯父さんには返しきれないほどの恩があるんです。だから頭を上げてください」

「千波……」

 ゆっくりと顔を上げた伯父は、悔しそうに唇を噛みしめた。

「今は私が千波の父親代わりだというのに、本当に申し訳ない。さっきも言ったが、会うだけでいい。それ以上のことを千波に強要させるわけにはいかない。……優美からも言われていることだと思うが、結婚はなにがあっても好きな人としなさい」

 優美は私の母の名だ。どうやら母は、伯父にもその話をしていたようだ。だけどそっか、伯父は私たちの父親代わりだと思って接してくれていたんだ。

 そう思うと嬉しくて胸が熱くなる。
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