政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 これが誰かを好きになる気持ちだと気づいたのは、千波と出会って半年が経った頃だった。

 千波の笑顔が頭から離れないのも、いつも千波のことを考えてしまうのも、全部好きだからだと思ったら納得がいった。

 それからますます千波を探すようになった。だけど再会は叶わず、三年が過ぎた中学一年生の夏。俺は初めて庵野家に受け継がれてきた言い伝えを祖父から聞かされた。

 最初は耳を疑ったし、冗談だと思ったけど、一緒に話を聞いた両親の険しい表情を見たら本当なんだってわかった。

 両親は迷信のような言い伝えを俺に守らせるつもりはないと、きっぱり祖父に言ってくれた。この話を俺にすることも反対していたらしい。

 だけど祖父は強く信じていて、庵野家のためにも言い伝えを守ってほしいと懇願された。

 両親はお見合い婚ながら互いを愛し合っていたし、祖父だって亡くなった祖母を愛していた。だから俺も結婚はそれなりに利害の一致になるものの、愛せる人とできると心のどこかで思っていたし、その相手は千波なら……と願ってもいた。

 だけど祖父の話を聞き、それは叶わない夢かもしれないと思っていたが、両親は俺に結婚は自由にさせたいと思ってくれていた。
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