政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「そうなのか?」

 自覚はないけど、これまで楽しみといったら仕事で成果を上げることだけだったが、今では千波と過ごす日々がこの上なく楽しくて愛おしくてたまらない時間となっている。

 彼女の前では素直な自分でいられるし、変に気遣うこともない。むしろ本当の俺を見て知ってほしいとさえ願う。

 俺が変わったというのは、間違いなく千波の影響だろう。

「あーあ、幸せいっぱいって顔をしちゃって。俺にも早く幸せな春がこないかな」

 そう言って立ち上がった佑志は、柔らかく微笑んだ。

「俺でよかったらいつでも力になるから声をかけて。あ、その代わり俺がピンチの時は助けてよ?」

「あぁ、わかったよ」

 たったひとりの大切な弟だ。佑志になにかあれば、どんなことでも力になるつもりだ。

「それじゃまたね」

「気をつけて帰ろよ」

「はいはい、まったく俺をいくつだと思ってるのさ」

 適当にあしらいながら佑志は手をひらひらさせて去っていった。

 そんな佑志に笑みを零しつつ、俺も食堂を後にして仕事に戻った。

 定時の五時を二時間ほど過ぎて帰宅すると、すぐにエプロン姿の千波が玄関に駆け寄ってきた。

「航君、おかえりなさい。お疲れさまでした」
< 164 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop