政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 びっくりして顔を上げれば、千波は今にも泣きそうな顔で俺を見つめていた。

「私より神屋敷さんのほうが航君に釣り合いますもんね。やっぱり私では航君に相応しくないです」

 なにを言っているんだ? 千波は。

 なぜ彼女が急にそんなことを言いだしたのかも、神屋敷と比べるのかもわからなくて困惑する。だけど千波が俺に相応しくないってことは絶対にない。

「千波以上に愛せる女性はいないし、俺は千波以外の女性のことなんて考えられないよ」

 ましてや相手はあの神屋敷だろ? 天地がひっくり返ってもあり得ない話だ。だけど千波はよりいっそう瞳を潤ませた。

「でも神屋敷さんは航君のこと……」

「神屋敷になにか言われたのか?」

 千波が急にこんなことを言うのは、それしか考えられない。それに佑志から聞いた話も気になっていた。

 俺が気づかなかっただけでやはり俺が少し席を離した間に、なにかあったに違いない。

 今度は千波が押し黙り、視線を落とした。

「俺も嘘をつかずにすべて話すから、千波も話してくれないか? 神屋敷となにがあったんだ?」

 急かすことなく彼女の答えを待つ。すると千波はゆっくりとこれまでの経緯を話してくれた。そして俺も佑志から聞いた話を包み隠さず伝えたら、沈黙の時が流れる。
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