政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「それに私から見るに、神屋敷ホテルにこれ以上の業績アップはないだろう。むしろ落ちぶれていくと私は考えておる」

 世界的にも有名な神屋敷ホテルに限ってそんなことはないはず。だけど昔から祖父のこういった勘は妙に冴えていてよく当たる。

「だから神屋敷ホテルのご令嬢とは、すっぱり手を切るんだ」

「それはもちろん」

「航にとって千波さんと一緒になることが幸せだとわかりましたもの。……もう私たちに反対する理由はありません」

 そう言うと父さんと母さんは、千波に向かって深々と頭を下げた。

「千波さん、これまでの私たちの非礼な態度を許してほしい」

「本当にごめんなさい」

「とんでもございません。航さんの幸せを願ってのことだとわかっていますから、どうか顔を上げてください」

 千波に言われて顔を上げた両親は、言いにくそうに切り出した。

「今からでもどうか私たちと家族になってください」

「私からもお願いします」

 父さんと母さんに千波のことを認めてくれたのが嬉しくて、胸がいっぱいになる。

「もちろんです。未熟でふつつかな私ですが、どうぞよろしくお願いします」

 涙声で言う千波に両親は顔を綻ばせた。

 よかった、本当によかった。
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