政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「じゃあキミは妹さんに奇跡が起きるのを待つというのか? そんな悠長に構えていられないほど深刻な状況なんだろう? だったら利用できるものはとことん利用すればいい。……俺の願いを叶えてくれるなら、俺もキミの願いをすべて叶える」

 ドクンと心が揺れる。

 ずっとずっと、母に結婚は好きな人としなさいと言われ続けてきた。それが私にとって母からの遺言だった。その願いを叶えてあげることが、亡き母にできる最初で最後の親孝行だと思う。

 でも母の願いや自分の幸せよりも、守りたい命がある。瑠璃は私のたったひとりの妹。昔から心臓を患い、たくさんの我慢をしてつらい治療にも耐えてきた。

 当たり前の日常を一度も経験できていない。学校に通って勉強をして行事に参加し、友達と遊んだり、出かけたり。思いっきり運動だってしたいはず。

 弱音を吐かずにいつも笑顔で、私の心配をして迷惑をかけていることを申し訳なく思っている。そんな思いをこれ以上させたくない。

 彼と結婚して子供を産むことで、瑠璃の幸せな未来が約束されるなら本望だ。母だって空の上できっと理解してくれるはず。でも……。
< 30 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop