政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 昨日も受けた紳士な振る舞いに慣れていない私は、「ありがとうございます」と言いながら車に乗り込む。

 ドアまで閉めてくれた航君は運転席に乗ると、私がシートベルトを締めたのを確認して車を発進させた。

「実家までは、二十分くらいで着くから」

「わかりました」

 じゃあそれまでに航君のご両親に会ってからのことを、シミュレーションしておこう。

「それと離れで暮らしている祖父も千波に会いたいらしくて、実家のほうで待っているとさっき連絡があった」

「えっ! おじいさんもですか!?」

 挨拶をするのはご両親だけだと思っていた私は、驚きを隠せなくなる。

「誰よりも千波との結婚を望んでいたのが祖父だったから、どうしても会いたいらしい。だから会ってあげてほしい」

「それはもちろんお会いさせていただきますが……」

 どうしよう、余計に緊張が増してしまった。おじいさんは私との結婚を望んでいたと言うけれど、想像していた子と違うと思われないように、粗相がないよう気をつけないと。

「昨日も言ったけど、変に緊張することはない。千波はただ俺の隣にいればいいから」

 それはやっぱり私が話したら、ボロを出すからですか? という言葉が喉元まで出かかり、必死に飲み込む。

 そんなことを言ったら、面倒なやつだと思われるだけ。

「わかりました」

 そう返事をすればそれ以上彼が口を開くことはなかった。
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