政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「行こう」

「は、はい」

 ナチュラルに腰に腕を回され、ドキッとしてしまう。チラッと様子を窺うけど、彼は至って通常運転。

 こういうエスコートや触れられることにも、慣れなくちゃいけないのかも。

 玄関に入れば本当に家の中はまるで高級旅館のようだった。すぐに家政婦らしき女性数名が駆け寄ってきた。

「航様、おかえりなさいませ」

「あぁ、ただいま」

 航君が返事をすると、次に女性たちは私に向かって深々と頭を下げた。

「はじめまして、千波様。私共、至らない点もあるかとございますが、今後もどうぞよろしくお願いいたします」

「いいえ、そんな……! こちらこそよろしくお願いいたします」

 こんな丁寧に挨拶をされたら、恐縮してしまう。

「やっと来たな。待っていたぞ」

 広い玄関に突然響いた声の主は、満面の笑顔で私たちに近づいてきた。七十代くらいの白髪交じりの和装の男性に、家政婦たちは道を開けて男性に頭を下げた。

 間違いなく彼が航君のおじいさんだよね?

 男性は私たちの前で足を止めると、満足そうに私と航君を交互に見た。

「はじめまして、千波さん。ようこそわが家へ。航の祖父だ。お会いできて光栄です」

「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。はじめまして、来栖千波です」

 なにやってるのよ、私。会ったら絶対に自分が先にちゃんと挨拶をするって決めてきたのに。

 不快に思われなかったかと様子を窺うと、おじいさんはいきなり私の手を握った。
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