政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 小さなワンルームのアパートに、必要最低限の家具しか置かれていない殺風景な部屋でひとりで食事することにも慣れてきた。
 瑠璃は一年のほとんどを病院で過ごしている。家に戻ってこられるのは、体調が安定している時だけ。

 歳を重ねるごとに心臓の働きが悪くなっているらしい。今後は心臓の移植手術も頭に入れておいたほうがいいと医者に言われている。

 でも移植を待っている人は大勢いて、なかなか順番が回ってこないと聞く。だから高額でも海外で移植を考える人が多いんだ。

 こうなることは瑠璃が生まれた時から覚悟していたことだった。でもそれは両親という家族がいたから乗り越えられるもの。

 私ひとりで瑠璃を支え、今後もちゃんとした医療を受けさせることができるのかと時々不安になることがある。

「ううん、弱気になったらだめ。瑠璃なら大丈夫だよ」

 そう自分に言い聞かせなければ、マイナスなことばかり考えてしまう。

 残りのコロッケを急いで口に入れ、手早く片づけを済ませて家を出た。

 辺りが薄暗くなった頃に到着した病院は、アパートから徒歩で十五分ほどの場所にある大きな総合病院だ。生まれた時からずっとこの病院でお世話になっている。
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