政略懐妊～赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方～

「こんにちは、千波ちゃん。いつもご苦労様。瑠璃ちゃんならちょうど夕食を食べ終わったところよ」

「ありがとうございます」

　看護師ともすっかり顔なじみとなり、こうして気さくに「千波ちゃん」と呼んでくれる。
　廊下の一番奥にある四人部屋の、窓側が瑠璃の病室。そっと室内を覗くと、瑠璃は本を読んでいるところだった。

「瑠璃」

「お姉ちゃん！」

　私の声にすぐさま反応した瑠璃は、嬉しそうに私に向かって手を振る。同室の患者に挨拶をしながら奥へと進む。

「ごめんね、遅くなっちゃって。肉屋のおばちゃんにコロッケとメンチ貰っちゃったから、ご飯食べてきたんだ」

「ううん、気にしないで。それにおばちゃんのところのコロッケは出来立てを食べるに限るもの。おいしかった？　昔と味は変わらない？」

「うん、おいしかったよ。……今度、家に帰れる時は肉屋のコロッケとメンチにしようね」

「本当？　楽しみ」

　満面の笑みを見せる瑠璃を眺めながら、椅子に腰かけた。

「体調はどう？」

「うーん……相変わらずかな？」

「そっか」