政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「わかりました。……ありがとうございます、こんな素敵な部屋を取ってくれて」

 私のためにお金を使ってくれることに対して、せめてお礼を言いたい。
 その思いで言えば、航君は少しだけ口角を上げた。

「ん、謝られるよりこっちのほうがいい。先に風呂に入ってこい」

 髪をクシャッと撫でられ、ドキッとしてしまう。

 そうだ。私、これから航君と……。

 結婚を決めた時から覚悟は決めていたけれど、いざその時がくると一気に緊張してきた。

「は、はい」

 逃げるようにバスルームへ飛び込み、ドアを閉めると同時に深いため息が漏れた。

 バスルームの洗面台に写る私の頬は赤く染まっていて、いかに自分が緊張しているのかがわかる。

「だめだ、お風呂に入って少しでも落ち着かせないと」

 このまま航君に抱かれたら心臓が止まりそうだ。

 大きく深呼吸をしてドレスを脱ぎ、広い浴室に入る。真っ先に目に飛び込んできたのはここからも見える都内の夜景と、浴槽に浮かぶバラの花びらだった。

「すごい、バラ風呂なんて初めて」

 シャンプーやリンス、ボディソープも有名ブランドのもので、香りに癒される。

「気持ちいい」

 夜景を眺めながらゆっくりと湯に浸かったら、少し緊張も解けた。
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