政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 返事を聞くと、航君は「わかった」と言い、私の手を離して席に戻った。私も椅子に座り、ケーキを口に運ぶ。
 だけどこれからのことを考えるとさっきよりも緊張が増し、半分以上残してしまった。

 レストランを後にして、航君が取ってくれた部屋へと向かう。そこはこのホテルのスイートルームだった。

 部屋に入って廊下を進み、一番奥のドアを開けると、広々とした客室が広がっていた。大きな窓からはレストランで見た都内の夜景が一望でき、部屋の中央にはゆったりとしたソファとテーブルがある。テーブルの上にはウエルカムフルーツが並んでいた。

 その奥にはキッチンとダイニングテーブルがあり、まるでマンションの一室のよう。

 一般の部屋でさえも宿泊料は高いはず。それなのにスイートルームとなればいったいいくらするのだろうか。

 それだけではない、もらった指輪にさっきのレストランでの食事代、ドレスやヘアメイク代と、どれだけ航君にお金を使わせてしまった?

「あの、すみません。たった一日で多くのお金を使わせてしまって」

 申し訳なくなって謝った私に対し、航君は眉間に皺を刻んだ。

「当然のことだろ? 夫が妻にプレゼントを贈るのも、初めて一緒に過ごす夜にホテルを取るのも」

「それにしたって、かなりの金額ですよね?」

「大した額じゃない」

 庵野グループの御曹司ともなれば、彼の言う通り大した額じゃないのだろう。航君と結婚する以上、一々こんな風に気にしていたらだめなのかもしれない。
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