政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 多分寝室は廊下を出たところにあるドアの先だよね。先に寝室に行って待っていたほうがいいのかな? それだとやる気満々だと思われるのでは?

 グルグルと考えを巡らせていると、バスルームのドアが開く音がした。いつもしっかりとセットされている髪は下ろされていて、少し幼さを感じる航君は、私と同じバスルームを着ている。

 真っ直ぐに私のもとに来ると、ジッと私を見つめた。

「それ、もらってもいい?」

 彼が指刺したのは私が持っているミネラルウオーターだった。

「はい、どうぞ」

 思わず差し出したものの、私が半分以上飲み干したものだ。だけどかまうことなく受け取り、彼は一気に飲み干した。

 空になったペットボトルを近くのごみ箱に捨て、私の髪をそっと掬う。

「緊張してるか?」

 もちろん緊張している。素直に頷くと、航君の手は髪から頬に移動した。

「俺も少し緊張している」

「航君も?」

 信じられなくて彼を見つめれば、気まずそうに目を逸らした。

「当然だろ? 千波を抱くんだから」

 私を抱くから緊張するってどういう意味? どうして航君はこうも私の心を乱すことばかり言うのだろうか。

 トクン、トクンと胸の高鳴りが増す。すると航君は私の肩と膝裏に手を回して軽々と抱き上げた。

「きゃっ!?」

 突然宙に浮いた身体に悲鳴にも似た声を上げ、咄嗟に彼の首にしがみつく。
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