政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「千波がどんなに緊張していたって、悪いけどやめるつもりはないから」

 まるで逃がさないというように私を抱く力を強め、彼は部屋から廊下に出た。そして間接照明を灯した寝室に入ると、大きなキングサイズのベッドに優しく私を下ろす。

 すぐに覆い被さり、私を見下ろす彼はとても妖艶で胸が締めつけられた。

「千波……」

 愛しそうに名前を呼んだ彼が、ゆっくりと近づいてくる。

 キスだ――。そう理解すると同時にギュッと瞼を閉じれば、唇に温かな感触が触れた。
 初めてのキスに、息が止まりそう。

 目を開ければ、視界いっぱいに航君の端正な顔が広がっていて本当に息が止まりそうになってしまう。

 それなのに目を逸らすことができないのは、彼が私の瞳を掴んで離さないからだ。

「千波」

 名前を呼びながら再び唇を塞がれ、何度も口づけが繰り返される。

 時には下唇を食み、リップ音を立ててまるで私の緊張を解くかのように甘いキスが落とされていく。

「千波、口開けて」

 言われるがまま口を開けたら、彼の舌が入ってきた。

「んあっ」

 思わず漏れた声に触発されたように、航君は執拗に逃げる私の舌を搦めとる。

 キスって唇を重ねるだけじゃないんだ。こんなにも羞恥心を煽られるものだったなんて知らなかった。
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