政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「昨夜も航さんとうちのホテルに宿泊されたようですけど、航さんがあなたを選んだのは、おとぎ話のような言い伝えがあったからです」

 厳しい声で神屋敷さんは続ける。

「航さんだって彼のおじい様に言われ、一族のことを思って仕方がなくあなたと結婚しただけ。絶対にこの先、航さんはあなたと結婚したことを後悔するはずよ。……私、航さんのことを諦めませんから」

 一方的に言って神屋敷さんは席を立ち、去っていく。

 神屋敷さんに言われたことはどれも真実で、私はなにも言い返すことができなかった。

 航君が私との結婚を望んだのは、来栖家との結婚によってもたらせられる繁栄を代々受け継がれてきたからだ。

 それに私たちの関係は契約の上に成り立っている。……それでも彼がくれる言葉や優しさに、いつしか本物の夫婦になれるのではないかと思っていた。

 でもそれは無理な話なのかもしれない。航君の周りには神屋敷さんのような女性がたくさんいるはず。

 彼女が言っていたように航君はいつか、私と結婚した日を後悔する日がくるかもしれない。もし、そんな日がきたら私は……。

 想像しただけで胸が苦しくなる。

 どうしてこんなにも泣きたいほどつらいのか、その理由を認めたくない。だって認めてしまったらますますつらくなるだけだもの。

 まだ確信を持てる気持ちじゃない。だったら航君に対する想いは必死に抑え込むんだ。そうでなければ一緒に過ごせない未来が訪れた時に困ることになる。

 航君の仕事が終わるまでに何度も自分にそう言い聞かせていた。
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