政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 それから三十分ほどで航君が迎えに来てくれた。

「マンションは会社から車で五分ほどの距離にあるんだ。駅に繋がっている地下通路には、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどが並んでいるから、買い物には不自由しないと思う。その他の買い物は俺が休みの日に一緒に行こう」

 車内で彼が色々と説明してくれているのに、なかなか頭に入ってこない。

「それとなにか困ったことがあれば、二十四時間常駐しているコンシェルジュを頼るといい」

 カフェで気持ちを切り替えようとしたのに、ずっと神屋敷さんに言われた言葉が頭から離れてくれない。

 航君が私と結婚したのは言い伝えがあったからだ。そのために借金を返済し、瑠璃の医療費まで出してくれた。この一ヵ月、彼と過ごした日々の中でもしかしたら本物の夫婦になれるかもしれないと思った。

 だけどそれは私の思い違いだったのかもしれない。言い伝えがなければ航君は、神屋敷さんのような女性と結婚していたはず。

 近い未来、彼女が言っていたように私と結婚したことを後悔する日がくるかもしれない。

 瑠璃のためにも前向きな気持ちで彼との生活を過ごしていこうと思っていたのに、何度も同じことを考えては胸を苦しくさせる。

「千波?」

「え? あっ、はい」

 心配そうに私を呼ぶ声に我に返る。するといつの間にか地下の駐車場に車は停車していた。
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