政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 だめだ、本当に胸が苦しくてたまらない。客室に入ると同時にドアに寄りかかった。

「些細なことに一喜一憂してバカみたい」

 好きになって傷つき、後悔するのは目に見えている。生涯ずっと航君が私のそばにいてくれる保証なんてないのだから、変に期待しないほうがいい。

 彼の周りにはきっと、神屋敷さんのような見合う女性がたくさんいるはず。あとになってからその女性と再婚したいって言われても、私には反対する資格なんてない。

 だって航君にはどんなに尽くしても返せない恩がある。借金に瑠璃の医療費、それに父のことも引き続き探してくれているもの。

 これ以上のことを望んだら罰が当たる。――なんて、航君に出会ってからなんてコロコロと変わる気持ちだろうか。

 結婚するからには始まりはどうであれ、いつか本物の夫婦になりたいと思ったり、神屋敷さんに言われて自信を失い、航君を好きになって傷つくのが怖いと臆病になったり……。

 なぜこんなにも心を乱されているのか、その答えはもうとっくに気づいていた。ただ、まだ出会って間もないとか、なにかと理由をつけて認めたくなかっただけ。

 航君のことが好き。だから些細なことで胸が苦しくなって、ドキドキしてしまうんだ。
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