政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「気づきたくなかったな、こんな気持ち」

 普通の恋ではないし、航君とは言い伝えがなければ住む世界が違い過ぎて、きっと……ううん、絶対に出会うことができなかった人だ。

 そんな人に想いを寄せたって、気持ちが届く確率はすごく低い。たとえ届いたとしても、それが永遠に続く保証はない。

 どうしても最後に行きつくのは、私と彼は生きている世界が違うということ。庵野グループの御曹司で、こんな素敵なマンションにひとりで住めちゃうような人。

 それになにより、私は彼のご両親によく思われていない。私を望んでいたのは、おじい様だけだったもの。

 こんな私をずっと航君は、そばに置いてくれるだろうか。

 まだなにもわからない未来のことを考えると怖くなる。これから私はどうすればいいのだろう。

「あ、片づけをしないと」

 クローゼットの前に積み重なっている五箱の段ボール。着替えと価値がないと判断され、差し押さえられなかったたくさんの家族写真や思い出の品が入っている。それと瑠璃の私物も。

 そうだ、瑠璃が航君に会うのを楽しみにしていた。だったらせめて瑠璃が元気になって戻ってくるまでは、彼との結婚生活を続けなくてはならない。とにかく今は、これまで通りに接しよう。

 そう心に決め、片づけを進めていった。
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