私は天使に侵されている
「え?え?」
「お金の心配なんていらないよ。
言ったよね?パパのマンションだって」
「でも……私も働いてるんだし……」

確かに美麗の毎月の給料では、ここの家賃のはした金くらいにしかならないだろう。
でも美麗は、お金の心配いらないなんて言われて“はい、そうですか”と受け入れられる人間ではないのだ。
「やっぱ不思議…」
「え?来夢くん?」
「今までの彼女はね…って言っても彼女といえるかわからないけど……美麗みたいな反応した人、一人もいなかったんだ。
“凄ーい!じゃあ、◯◯のマンション住みたーい”とか“じゃあ、遠慮なく!”って言って、セレブ生活みたいなのを味わってた。
むしろ、お金の心配なんて全くしてなくて、美麗みたいにお金どうしようなんて言われたことないよ」

「それは悲しいね……」
「え?悲しい?」
「その人達…あ、恋人さんを悪く言うのはいけないけど……
来夢くんのこと、愛してなかったんだね…きっと。
来夢くんが、大きな銀行の御曹司さんだからそれを利用してたみたいに聞こえる。
来夢くんは優しいから、相手を想ってしてることなのに………」
美麗は悲しそうに顔を歪ませ言った。

「━━━━━━━
美麗って……ほんっと…純粋なんだね……
参ったなぁ……なんか、僕の方が乱される。
こんなはずじゃなかったのに……」
「え……来夢…くん…?」

来夢は、初めて混乱していた。
美麗に出逢って、初めてのことばかり起きてるから。
一目惚れしたこと、自分から同棲をしたいと思うこと、我慢をすること、そしてこんなにも他人の為に尽くしたいと思ったことも初めてなのだ。

日に日に美麗に、心が奪われている。
それが自分ではっきりわかるのだ。
こんなことも初めてだ。
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