私は天使に侵されている
「君、名前は?」
「え////?」
「名前!教えて?」
「熊川です…////」
「熊川、何?」
「へ?」
「名前!」
「熊川 美麗ですけど…」
「へぇー、美麗かぁ!
名前も可愛い~!
美麗って、彼氏いるの?
どこに住んでるの?
連絡先教えてよ!」

立て続けに聞いてくる、来夢。
普通なら退くレベルだが、何故か嫌な気はしない。
来夢のカッコ良くて可愛らしい容姿のお陰なのか、すがるような甘い声だからか。
天使のような純粋な雰囲気のお陰か……

やっぱイケメンは特だなぁ……なんて考えてみる。

「ねぇ、黙ってないで答えてよぉ!」
「あ、あの…////」
「ん?なぁに?」
「貴方の方こそ…名前…////」
「あ!そうだよね!
僕は夢野 来夢。
ユメノ銀行知ってる?」
「え?もちろん!大手の銀行ですから!私も口座持ってるし」
「その頭取の息子なの」
「え!?凄いですね!御曹司だ…」
「フフ…ねぇ、次は美麗が答えてよ!
彼氏いる?」
「いえ…」
「ほんと!?」
「はい」

「じゃあさ!
僕、美麗に一目惚れしたの!
僕の恋人になって!」

「……………
は━━━━?」
小柄な美麗を見下ろし、人懐っこい微笑みを浮かべ言った来夢。
そこには“何の”偽りもなく、純粋その物の笑顔があった。
正直、美麗も来夢にときめいてはいた。
でもあまりにも唐突な告白に、フリーズする美麗。

「ちょっ…来夢!やめろよ!退いてんじゃん!
すみません、店員さん。
本気にしないでくださいね!からかってんですよ!」
健悟が戻ってきて、来夢と美麗の間に立った。
「え?あ、はい」

そりゃそうだよなぁ。こんなカッコいい人が私に一目惚れなんかするわけないよね……
と心なしか残念に思っている美麗。

「は?なんで?」
来夢が、健悟を見据えた。
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