私は天使に侵されている
「………」
草野達は、圧倒されていた。
まさかこんな風に美麗が言ってくるとは思っていなかったのだ。

気の小さい、バカな女だと思っていた。

「何の話をしてるの?」

そこに来夢が現れる。
「え……」
草野達は“まずい”と思う。
「ううん。何でもないの。
ファンの皆さんとの秘密の話!
来夢、向こうに行こ?
さっきトイレ行く時に通ったら、景色綺麗だったよ!
一緒に見たいな!」
美麗は涙を拭って来夢の手を引き、微笑んで言った。

「……………わかった。飲み物持って行こ?
ゆっくり二人で飲もうよ!」
来夢は何か察してはいたが、美麗の切ない笑顔に何も言えなくなり美麗に従ったのだった。


「来夢」
「ん?」
「このピアス…宝物って聞いたんだけど……」
小さい丘の芝生に座った来夢の足の間に、後ろから抱き締められ美麗が座っている。
右耳のピアスに触れながら言った美麗。
来夢が美麗の顔を覗き込んだ。

「うん、そうだよ。
この二つのピアスは、パパがママにプレゼントした婚約指輪のダイヤを加工して作ったピアスなんだ」
来夢は自分の黒い羽のピアスと美麗のピアスを触れ、少し切なそうに言った。

「ごめんなさい!そんな大切な宝物を普通に貰っちゃって……私がいいなぁなんて言ったから、来夢…しかたなくくれたんでしょ?」

「僕の宝物を、宝物の美麗にあげて何が悪いの?」

「え……」
「美麗、こっち向いて?僕に跨がって座って?」
そう言って、美麗を自分に跨がらせて座らせた来夢。
そして少し美麗を見上げた。

「美麗はね、僕の“宝物”
うーん“物”って言い方は変だけど、パパと同じくらい大切な人なの。
いや……ある意味、パパよりも美麗が大切だよ!
だから、美麗にプレゼントしたんだよ」
美麗を見据え、はっきり言った来夢。

美麗はまた、涙が溢れていた。
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