私は天使に侵されている
それから一ヶ月経った。
案の定、次の日からほぼ毎日通うように健悟達と現れた来夢。
いつもみんなの中心で囲まれている来夢。
そして美麗と目が合うと、ニコッと微笑んで小さく手を振るのだ。

大学の帰りや、合間の昼食。
そして今日は、講義が急に休みになったからと来夢一人で現れた。
「美麗~来たよ!」
「あ、来夢くん!
お疲れ様」
「ねぇ、もう終わりだよね?
一緒に帰ろ?」
「うん、ちょっと待っててね!」
そしてほぼ毎日、送り迎えをしてくれているのだ。

準備をして出ると、来夢がバイクに跨がり待っていた。
「はい!美麗」
ヘルメットを渡してきた。来夢とお揃いのヘルメットだ。
「う、うん…」
「まだ怖い?」
「す、少し…でも大丈夫だよ」
バイクに乗ったことなかった美麗。
最初はずっと震えていた。
来夢はそんな美麗を“可愛い~”と微笑ましく見ていたが、美麗にとって物凄い勇気のいることだ。

「美麗が怖いなら、歩いて帰る?」
「え?でも、それじゃ…バイクはどうするの?」
「ん?誰かに持って帰ってもらうから大丈夫だよ!」
「え……誰かって、お仲間さんのこと?」
「うん」
「その為だけに呼ぶの?」
「うん」
「じゃあ、乗って帰ろ?」
「いいの?怖いでしょ?無理しないで。
僕は美麗とゆっくり歩いて色々話をするのも好きだよ!
まぁ、バイクに跨がって僕にしがみついてくれるのも好きだけど!」
「だって、わざわざバイクを届ける為に来てもらうなんて悪いよ。だから、乗って帰らなきゃ」
「どうして?」
「どうして?って、なんか利用してるみたいで嫌でしょ?お仲間さんは来夢くんのお友達で、シモベとかじゃないんだし……」
「シモベ?」
「うん。ごめんね、来夢くんのお友達をそんな風に言って……」
「シモベかぁ。そんな感じかも?」
「え!?ま、まさか!」
「だってぇ、みんな僕のこと来夢様って呼ぶし!
そんな感じでしょ?」

美麗は、来夢の仲間のことを思い出していた。
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