私は天使に侵されている
来夢は高校生の時に暴走族を作り、そこの総長として君臨していた。
一度、その暴走族のたまり場に連れて行かれたのだ。

やっぱりユメノ銀行の頭取の息子だからかなと思ったが、健悟曰くびっくりする程喧嘩が強いらしい。
「俺、来夢と小学生の時からのダチなんだけど、中学に入った時にある先輩に来夢と二人で喧嘩の仕方みたいなのを教えてもらったんだ。
その先輩、俺が今まで見た中で一番強くてカッコ良かったんだけど、その先輩が“来夢は言い方変だが、喧嘩の才能みたいなのがある”って言ってたんだ。
だから、来夢ってあんな可愛い顔して破壊的に強いよ!」
と、身体をブルッと震わせて言っていたのだ。

「しかも、あのユメノ銀行の頭取の息子だし、頭もいいし、ほんと…あのワガママがなけりゃ完璧だよ!」
と、更に続けて言っていた。

そんな来夢。
健悟や他の友達以外には“来夢様”と呼ばれ、ある意味崇拝されていた。

「と、とりあえず帰ろう。
私は大丈夫だから」
そう言うと、美麗は来夢からヘルメットを受け取った。
バイクに跨がり、来夢の背中にしがみついた。
「フフ…」
「え?あ、ごめんね!しがみつき過ぎかな?」
「ううん!嬉しいから!」
「え…?」
「美麗が僕にすがって、頼ってくれてるみたいで!
もっとギュッてして?」
「うん…」
ふと顔を上げる。

「あれ?来夢くん、髪の毛切った?」
「あ!やっと気づいてくれた~」
「ご、ごめんなさい…」
「ううん!どう?カッコいい?」
振り向き、ニコッと微笑み言った来夢。

「うん。元から来夢くん、カッコいいし。
もっとカッコいいよ!」
「フフ…ほんと?ありがと!
美麗が雑誌見てたでしょ?僕と一文字しか変わらない名前の俳優。その人に負けたくなくて!」

「え……?」
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