たぶん、きっと、すき。
6.嘲笑 side春名智希
目を覚ますとさっちゃんは既に服を着ていて、ソファの上でスマホを見ていた。もうホテルを出る準備はできているようだった。
さっちゃんに声をかけると、さっちゃんはいつも通りおはようと返した。
あれだけ弱っていたさっちゃんが嘘みたいにケロっとしていて、それが少しだけ嬉しくて悲しい。
結局、さっちゃんは自分一人の足で立ち上がる。
一線を超えたってさっちゃんの心が俺に向くなんてことありえなくて、そんなのわかりきってたことなのにどうしようもなく落ち込んでしまう。
「さっちゃん、もう出る?」
「うん。ハルの準備ができたら出よ。」
「わかった。」
あっさりとしていた。
ホテルを出て俺のチャリでさっちゃんの家の前まで送り、特に話すでもなく解散した。
虚しかった。
どうしようもなくイライラした。
イライラしたまま自宅に帰ると、タイミング悪く弟と鉢合わせした。どうしてこうこいつに会うときは決まって虫の居所が悪い時なんだろうか。
目の前のそいつはこれから学校に行くのだろう。大きめのカバンを背負っていた。
そいつは俺の顔を見ると笑った。
まただ。
また、見下したように笑う。
「何?」
「別に。ああ、ただ、何度見てもだせえなって思って。」
「あ?」
「カッコ悪。」