無彩色なキミに恋をして。
こういうとき嫌でも思い知らされる。
”社長の娘”としての自分の立ち位置を。
失礼しますと挨拶をして医務室から出ると
その足で早退届を提出に総務課へ向かってみたけれど、心も足取りもずっしり重たくなった。
「さすがに落ち込むな…」
あんな事を言われるとは思わなかった。
『体調管理も仕事だ!』って説教されるよりクルものがある。
社員達がわたしをどう思っているかは
誰も何も言わないけれど伝わっているし、覚悟の上で”普通”に過ごしているつもり。
課せられた難題だと理解もしている、つもり。
それでもたまに
その《《一線》》が深い溝だという現実に苦しくなる。
早退届を提出し終えて自部署に戻り事情を説明後
普段は素気ない人達からの
『大丈夫?お大事にしてくださいね』の言葉でまた傷つきながら、わたしは病院に寄りつつタクシーで帰宅した。
時間はまだ13時。
こんな早い時間に帰ってくる事なんて早々ないから
なんだか変な感じ。
ハウスキーパーさん達も体調を心配してくれて、残ってくれると気遣ってくれたけれど断ってしまった。
薬を飲んで寝てれば良いだけの事。
部屋着に着替えてベッドに潜ると
すぐに眠りに就いた――――