無彩色なキミに恋をして。
もう何年も風邪なんて引かなかったからか
久しぶりに弱ると、昔の思い出を甦らせる。
それは、母の存在。
あの日を境に
記憶も、声も、すべて
失ってしまった。
お母さん…ーーーーー
夢と現実の間に発した自分の声で
目が覚めたと同時に飛び起きた。
「はぁッ、はぁッ」
全力疾走したような疲労感に息切れ。
あー…すごく嫌な夢…
それだけはハッキリわかる。
「どうして今になってこんな…」
じわりと全身から汗が噴き出すような緊張と
無意識に涙を流していて
髪も枕も濡れて冷たいし気分は最悪。
だけど早めに薬を飲んで寝たおかげか
身体は寝る前よりマシになった気がする。
たぶんだけど…。
外がまだ明るいって事は
眠ってからそれほど時間が経っていない証拠。
水分補給と体温計を探しに部屋を出たけれど…そういえばどこにあったっけ。
いつも燈冴くん任せだったから…
はぁ…情けない。
調子が悪いせいかマイナス思考ばかり。
何も考えずに寝て、起きたらスッキリすれば余計なことは考えなくて済むのかもしれないのに、悪夢のせいでもう眠れる気がしない。
体温計を諦めたわたしは
キャビネットからグラスを取り出すと
ウォーターサーバーから冷水を注ぎ入れて…
手を止めた。