無彩色なキミに恋をして。

静かな室内に耳が研ぎ澄まされる。

ハウスキーパーさんが帰ってしまったし燈冴くんもいない。

この家には
わたし以外、誰もいないはず。

それなのにどうして?

”がたがた”と物音が聞こえた気がする。



「気のせい…よね」

息を呑んだ。

辺りを見回しながら”音”に全神経を集中させてみると、今度はコツコツ…と廊下の方から足音が聞こえてくるし、これってまさか・・・泥棒!?

それもこんな真昼間から?


徐々に近づいてくる足音に
”やばい、なんとかしなきゃ”って戦いを自らに課して、ナイフスタンドから包丁を手に取り刃先をドアへと向けた。

いざこんな事をしてみたけれど…
この後どうしたらいいかまでは考えてなかった…

今から起きるであろう出来事をイメージして頭に浮かべたけれど、逆に襲われるかもしれない恐怖に、想像しただけでももう既に足が動かなくなって、()を持つ手まで震えだす。


私、本当にバカ。
半端な覚悟だったから
体は動かないから足は一歩も前に出ないし声も出せない。


緊張が最高潮になる中で
リビングのドアはゆっくりと開いていき
ただ瞬きもしないで視線の先を一点に見つめるしか出来なくて、震える体を必死に抑えようと包丁を握る手に力が入る。


どうしよう燈冴くんッ




「緋奈星さま?」


えッ…――――――

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