冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「ちょっと瀬川さん!? え!?」
触れられているのは手だけなのに、全身から火が出るのではというほど熱い。
まさかキスでもされるの?というありえない仮説や、それとも結婚にあたり身体検査をされる?と冷めた彼にふさわしい答えをぐるぐると考える。
入室してすぐキスだとか、瀬川さんに限ってそんな情熱的なことをするはずがない。いや、まだこの人のことをよく知らないけれど。
しかしそのまま唇が重なりそうなほど迫られ、もしかしてこれはキスなのでは──とよぎった、そのときだった。
『ご忠告です』
廊下の先の扉の向こうから、女性の声が聞こえた。いや、女性は女性なんだけど、まるで電話の自動音声のような。今のは、なに?
「なんだ」
私と至近距離のまま、彼はその声に返事をした。わけがわからず私だけ緊張感が高まり、息を潜める。
『お相手の声に戸惑いが生じています。再度、合意の有無を確認してください』
私には意味がまったくわからなかったが、ドアの向こうにいる女性の言葉を受けて瀬川さんは私の手を解放し、なぜか距離を取った。