冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
彼は私には譲歩してくれるため冷たいとは感じなかったが、他人に見せる顔はそうではないのかもしれない。
ビジネスの場では、とくに。
あの出会い方でなければ、私は瀬川さんに冷たく切り捨てられる側の人間だっただろう。
「奧さん、アンタも。この偏屈野郎をどうやってその気にさせたのかは知らねぇが、そのうち後悔するぞ」
突然目鼻の先に突きつけられた指に戸惑い、「そんなことは……」とモゴモゴした返事をすると、瀬川さんの手がその指を払う。
「芽衣に触るな」
「へえ? ずいぶん奧さん想いじゃねぇか」
手首を鳴らす桐生さんを、瀬川さんの目が鋭さを増して睨みつけた。
「……桐生。なぜ俺の妻に突っかかる。気があるのか」
絶対ないって!
私がそう口に出す前に、桐生さんの「はぁ!?」という怒号が飛んでくる。
「あるわけねぇだろ!」
「ならあまり芽衣をジロジロ見るな。俺の妻にひと目惚れでもされたらたまったもんじゃない」