冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

するわけないって!

「するわけねぇだろ! こんなっ……」

桐生さんの言葉はおそらく、私の頭に浮かんだものと同じだろう。
〝こんなかわいくもない女〟、それとももっとひどく〝こんなブス〟と言う気だったのかもしれない。

彼は咄嗟に出た言葉を呑み込み、さすがにそれ以上は口にせず、ひと呼吸置いてから「お前のものを欲しがるほど飢えてねぇよ」と言い直す。

「俺に言いたいことがあるなら好きにすればいいが、妻には近づくな」

「だから飢えてねぇって言ってんだろ。……でも、なんか怪しいぜ。ロボットみたいなお前がどうしてそんなに執着するんだ?」

桐生さんは瀬川さんを睨みつけていた目を、そのまま私へと向ける。

「なんか弱みでも握ってんのか? 奧さん」

「桐生。いい加減にしろ」

さっそく結婚の裏事情がバレそうだと冷や汗をかいていたところで、私の視界は瀬川さんの背中で完全に遮られた。
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