冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

『いろいろありますよ。芽衣さんの前だと声の調子が変わりますし、口数も少なくなります。あと心拍数もえらいことになってます』

そんな科学的な証拠を示されるとは思っていなかった私は呆然とした。
でも優秀なジータのことだから、新妻に気を遣うところまでプログラムされていそうだ。

だってベタ惚れとか私には見せたことないし、そもそも惚れる要素がどこにもないし──。

『芽衣さん、裏返さないと』

「あっ」

落としただけで満足し放置していた生地をやっとひっくり返す。
低温でじっくりと焼けるパンケーキ専用グリドルの綺麗な焼き色が目に飛び込んできた。

「すごい! 見てジータ。綺麗な色!」

『ええ。バッチリですね』

ふわふわに仕上がるよう早めに皿に移し、手際のよいジータが目玉焼きとベーコン、レタスを添えてくれる。

ここで完成かとダイニングへ持っていこうとしたジータを止め、私は湯煎していた市販のチョコペンを用意する。
それを二枚重ねのパンケーキへ向けて構えた。
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