冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

まだお店は『CLOSE』の札が下がっている。
扉を引こうと手をかけたとき、周囲の視線に気がついた。
まだ開店前なのに、人が集まっている気がする。

土曜などはこの時間に行列ができることもあるが、開店待ちをしている感じではない。
中の様子をうかがっているという感じの若い女性たちや、こちらを指して「あれじゃね?」と笑っている大学生らしきグループもある。

不審に思いながらも中へ入り、店長たちに「おはようございます」と声をかけた。

「あ、おはよう芽衣ちゃん」

響子さんは明るく挨拶をしてくれたが、困惑した笑みを浮かべていた。

「今日なんだか人が多いですね。でも列で並んでくれてないし、お客さんじゃないんですか?」

「うん……違うみたい。たぶん野次馬じゃないかしら」

「野次馬?」

笑いながら中を覗き込もうとする人々にピンとこないまま背筋はゾッとする。
店長も手を止め、キッチンから出てきた。
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