思っていたのと 違うのですか‼︎


家へ戻り、支度を整える。

現地調達をする事が多いのに、珍しいとついて行けば、ラウンジで食事をしている奥様の元へ歩み寄る。

一応挨拶をしておかないと

そう思い当たり障りのない挨拶をする。

「ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。
第一秘書を務めさせて頂いている葉山 健(ハヤマ タケル)と申します。以後お見知り置きを」

「置かなくていい」とボヤく智。

全くの無関心ではないようだ。

内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚の名刺を差し出す。

「智様に御用の際は、こちらの番号にお電話頂ければ、必ず取り次ぎますので」

ビクビクと奥様は名刺を受け取った。

初めて間近で見たが、世界に名だたるスドウグループ次期代表の妻として大丈夫なのだろうか?

それが第一印象だった。

夫婦同伴で出かける事も少なくない世界。

可愛らしさはあっても、あの世界でやっていけるとは思えない。

腐っても葉山の娘。

それだけで価値があるのだろう。

しかし、それだけではないと言う事はすぐにわかった。


いつもスマホを放置している智がスマホを手放さない。

隙を見つけては、スマホを取り出し、眉間に皺を寄せ、SMSや電話を入れ、溜息を吐き、しまうを繰り返している。

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