猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
あの雨の日から半年。私はほぼ毎日ここに通っていた。

(そりゃ常連にもなるよね)

そしてあの日、失恋して、恋に落ちた。

我ながら、めちゃくちゃ単純だと思う。でも、失恋したてで優しくされて(しかもイケメンで)、笑顔がステキで大人のおじさま。これで恋に落ちない人っていないんじゃなかろうか。

あの時の三毛さんの笑顔とミルクティーの味は、一生忘れられない。

「お待たせいたしました。ミルクティーです」

出逢った時の思い出に浸っていると、甘い香りを漂わせたミルクティー入りのカップが置かれた。

「ありがとうございます……良い香り」

カップを手に取り、スゥッ……と香りを吸い込む。

猫舌の私に丁度いい温度のミルクティーを一口すすり、いつもと同じ優しい味に、ホッと溜め息が漏れた。

「……美味しいです」

「ありがとうございます」

三毛さんが、微笑む。

いつもと同じ会話。でも、なんだかとても幸せに感じてしまう。

半年前に「好きな人が出来た」と勝手言って別れたアイツとは違って、穏やかな三毛さんといるととても落ち着く。

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