猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「……茶葉、変えました?」

「え……?」

私の言葉に一瞬キョトンとした三毛さんがその言葉に目を見開き、ガバッ!と茶葉の缶を手に取って

「申し訳ありません……茶葉の種類を間違えて淹れてしまった様です……」

と言って項垂れた。

おお、珍しい事もあるもんだ。

普段の三毛さんを見ていると紅茶の知識や淹れ方なんて完璧に見えるから、こんな場面に遭遇するのはとても珍しいし貴重だ。

それとも、さっきの事を私に見られて動揺してしまったのだろうか。

「珍しいですね。新しい茶葉に変えたのかと思いました。でも、これはこれで美味しいですよ?」

そう言ってもう一度ミルクティーを飲もうと伸ばした私の手を、三毛さんが静止する。

え?と今度は私がキョトンとしてしまう。

「いえ、この茶葉はミルクティー向きではないんです。淹れ直しますんで待ってて下さい」

そう言って私が何かを言う前にさっさとカップを撤去し、流しに持って行こうとする。

それを見た私は慌てて三毛さんを制止した。

「ちょ、ちょっと待って下さい!大丈夫ですよ!これも美味しいです!捨てないで下さい!」

「ですが……」

「折角淹れてくれたのに、勿体ないです!ミルクティーが泣きます!」

「え……」

三毛さんが、目を見開いて叫んだ私を見る。

「……え?」

フリーズする二人。

……あれ?私、なんか変な事言った?

少しの沈黙の後、三毛さんが急にフッと微笑んだ。

「ど、どうしたんですか?」

「あ、いえ……実森さんが同じ事を言ったんで、ちょっとビックリして……」

「同じ事?……誰とですか?」

三毛さんの返答はなんとなく分かってはいるけど、私は聞き返した。

「……結子さんとです」

案の定思った通りの返答だったけど、私は別に驚きはしなかった。

結子さん。三毛さんの、亡くなった奥さん。写真立てに飾られている、今でも三毛さんの心を掴んで離さない、最愛の人。

「……どこら辺が同じだったんですか?」

私は奪い返したミルクティーをテーブルに置き、座り直した。

私の問い掛けに、ポツポツと、三毛さんが話し出す。
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