猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「このお店の『milk tea』と言う名前の由来は、結子さんがミルクティーが好きだったからなんです」

(あ…やっぱりそうなんだ……)

初耳だったけど、色んな話を聞いていてそんな気はしてた。

「開店間近だって言うのに、お店の名前にもなっている看板商品のミルクティーがなかなか納得の行く味に出来なくて、何度も失敗していたんです」

「三毛さんでも失敗するんですね」

今の三毛さんからは想像が付かない。

「そりゃ、しますよ。たった今もしました」

鼻の頭を掻きながら、ハハハと笑う。

「最初の頃なんて、失敗続きでした。結子さんが店の看板商品をミルクティーにしたいって言い出してからは何度も何度も試行錯誤を重ねて。でも最初から上手くなんて淹れられないから、大量のミルクティーが作られる。流石に飲みきれないとそれを廃棄しようとしたら、先程の実森さんの様に結子さんに止められたんです。『捨てるなんて勿体無い!ミルクティーが泣くわよ!』って……」

「ああ……」

確かに、さっき私も同じこと事を言った。

「そんな事を言われたら廃棄出来なくなってしまって、それからしばらくは二人でミルクティーを嫌と言う程飲みました。それこそ、もう一生分ってくらい」

その時の事を思い出しているのか、三毛さんがクスクスと笑う。

「でも、なんとかオープンの前日に納得の行くミルクティーが出来て、今こうして皆さんや実森さんに提供出来ている訳です」

「そうだったんですか……」

ミルクティーは、三毛さんにも結子さんにも特別な物なんだな。

「あ、すみません。長々とこんな話……」

「あ、いえ……」

三毛さんがちょっとバツが悪そうに鼻の頭を掻いた。

「こんな話、誰にもした事無かったのにどうしたんだろう……?」

と言いながらブツブツ呟いている。

< 31 / 106 >

この作品をシェア

pagetop