猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
        ザァァァァ……――



  ザァァァァ……――



       パシャンパシャン……――

 パシャンパシャン……――



       ザァァァァ……――






   『……ニャーン……』






「え?」

公園へと急いで走っていると、どこからともなく猫の鳴き声。

その声に、私は足を止めた。


『……――ン……ニャ――……』


雨の音に紛れてはいるけど、やっぱり猫の鳴き声がする。

「どこ?」

微かに聞こえる声を頼りに辺りをキョロキョロと探していると、低い街路樹と街路樹の隙間に小さい段ボール箱が置かれているのが見えた。

「もしかして……」

近寄り見てみると、その段ボール箱には『誰か拾って下さい』と書かれてあった。

蓋を開けると、中には真っ黒な子猫が一匹。

「酷い……」

こんな小さな命を簡単に捨てるなんて。

「ニャーン……!ニャーン……!」

子猫は、私の姿を見て一生懸命に鳴いている。

……いや、泣いている。

一人でこんな箱に入れられてこんな所に置いてけぼりにされて、どんなに不安だっただろう。

私はしゃがんで、頭を撫でた。

「怖かったでしょ?」

「ニャーン……」

撫でた私の手に頬を擦り寄せ、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

でも、うちは動物禁止のアパート。連れて帰る事が出来ない。

でも、このまま放って置く事も出来ない。

「どうしようかな……」

「ニャーン……」

不安そうに鳴く、子猫。

私のアパートが駄目なら実家で飼えないだろうか。

「あ……でも弟が猫アレルギーなんだった」

大学に入学して一人暮らしを始めて、たまにしか実家に帰って来ない弟。

弟大好きのお母さんが、もうちょっと実家に顔を出してくれても…と最近ボヤいていた。

猫なんて飼い出したら、弟の足がますます実家から遠のくだろう。

「う~ん……どうしよう……」

公園に避難する事も忘れて悩んでいると、突然私の周りから雨が消え、後ろからスッ…と手が伸びて来て子猫を持ち上げた。

(……え?)

持ち上げられた子猫を追って振り向くと、30代後半~40代前半位のおじさんが心配そうな顔をして私に傘を差し出してくれている。

突然雨が消えたのは、傘のおかげだった。
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