猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
――生田さんだ。

どうして生田さんがいるんだろう?

昨日三毛さんは、明日(今日)は生田さんはシフトに入っていないって言っていたハズ。

生田さんは私に気が付かず、そのまま三毛さんの左隣に腰を下ろして何かを話している。時折、三毛さんの背中を擦ったりポンポンと撫でたりしながら。

耳を澄ませてみるけど、ドア一枚隔てていてはその声は聞こえない。

(よしっ!)

このままでは埒が明かないと思った私はお店の中に入ろうとドアノブに手を伸ばす。

すると突然、生田さんが三毛さんの首に腕を絡ませた。

(え!?)

三毛さんが顔を上げる。生田さんも三毛さんにつられて顔を上げた瞬間、パチッ!とドア越しに私と目が合った。

私も生田さんも、「あ……」と言う反応をする。

双方驚いた反応を見せたけど、生田さんは私を見ながら何故かニヤッと笑い、三毛さんの顔を引き寄せた。

「ウソ……」

私はその光景に目を見張る。

三毛さんが、生田さんを引き剥がす。

私から見て三毛さんは後ろを向いている状態なので、どう言う反応をしているのか分からない。

頭がガンガンする。

(なに……?今、何が起こった……?)

明らかに、キスをした二人。

眩暈がして、ガタンッ!と、窓枠に手を付いた。

あっ……と思った時には遅くて、音に気が付いた三毛さんが私の方を振り向く。

私を見付け、三毛さんの表情が強張った。

私は、咄嗟にその場から走って逃げた。

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