関係に名前を付けたがらない私たち
「やばい。飲み過ぎた」

 涙目で訴える私に「耕平とうまくいってないの?」と問いかけてきたその子に「うん。うまくいってないっぽい。なんかもうどうでもいいや」と半ばヤケクソで答えた。

 ふらふらと足元がおぼつかない私を支え、何とか椅子に座らせてくれると、別の子から「はい、水」とグラスを渡された。
 どうしてなのか、唐突に悲しくなった私は、お酒の影響もあったのかもしれないけれど、しくしくでも、さめざめでもなく、おいおい泣いた。皆がドン引き気味するほどに。

 私と耕平の関係は日を追うごとに冷えている気がする。セックスがとにかくない。キスもない。最近は手すら繋いでいない。何だかもう彼氏彼女というよりは同居人。

 それなのに、耕平は私を好きだと言う。だから全くもって意味が分からない。

「あいぼんがどう言おうと、俺はあいぼんが好きだし」

「嘘つきか」

「ほんとだって。まあ、信じないならそれでいいけどね」

 愛を信じない彼女、それでも構わないという彼氏。一見かっこいい言葉っぽく思えるけれど、噛み砕いて考えれば意味不明だ。

 愛を信じていない=どうでもいい
 それでも構わない=どうでもいい
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