関係に名前を付けたがらない私たち
7章

*赤い糸は腐ってる

 破局から3ヶ月はすれ違いもしなかったのに、なぜかこの日以降、私たちはちょいちょい鉢合わせたり、ばったり遭遇したり、耕平は気付いていなくても私が彼を見かけたり、逆も然り、みたいなことが多々あった。

 同じエリアで働き、同じ街に暮らしていれば、そういうことがあっても何ら不思議じゃない。

 不思議じゃない―――いや、不思議じゃない?

「もしかして耕平って私のストーカー?」

「いやいや。それ、まんまこっちの台詞なんだけど」

 絶対あり得ないような場所で耕平とばったり鉢合わせた時は、偶然というよりは、もはや意図的に計画された犯行じゃないかと思った。

 だって一般的にレディースクリニックという所は、その名の通り”ご婦人の病院”であって、男がふらりと立ち寄るような場所でもなければ、妊婦検診の付き添いくらいしか用事がないはず、と思うのだけど。

 しかも私、このレディースクリニックを受診するのは初めてだった。
常連ならまだわかる。
でも初めて受診したレディースクリニックで、元カレとばったり鉢合わせるミラクルはそうそう起こらないと思う。

 こんなの不思議じゃない? 不思議だよね。っていうか、

「怖っ」

「だからこっちの台詞だって」
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