朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
つまり、今日、泉は帰らないということ。

撫子がここに居るということは、もちろん温泉に一緒に泊まるのは撫子ではない。
間違いなく京と一緒なんだろう。

ホワイトデーという今日の日は、恋人同士なら特別な日。
だから二人は…

「その……ホワイトデーのプレゼントがね、温泉旅行だったの。
泉も……初めてのお泊まりだから、愛先生にも言いにくくて、私と泊まりに行くことにしたのよ…」

「……」

「ごめんね……。
私、余計なこと言った」

「……いや……」

一瞬、言葉に詰まってしまった。
何か言わなくては、と思うのに、言葉が出てこない。

「スイーツはやめ!」

「は?」

「飲みに行くよ!」

「飲み……いや、俺はアルコールは…」

「私が飲みたいの!
付き合ってよ。ね?」

「……あ、ああ……」

撫子に引っ張られるように、俺達はビジネス街の方へ歩いていった。

普段の俺はあまり飲むことがない。

店など、全く知らなかったので、行先きは撫子に任せて、ただただボーッと歩いていた。

考えることを拒否したかったのだ。
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