愛するあなたへ〜blue roseを私にください
佐野さんと待ち合わせ場所を決めて、会うことにした。

2人で会社の駅から少し離れたファミレスで待ち合わせをした。
翔さんは午後から来客で、会うことはないと佐野さんからの提案だった。
ファミレスの近くに来た時、とても気品のあるご婦人がきょろきょろ何かを探していた。
「どうかされましたか?」
「ここのお店を探しているんですけど、どこか分かりますか?」

うちの会社の近くのカフェだ。
「そこなら、こちらの道の方が近道ですし、分かりやすいので、近くまで行きましょう」
佐野さんとの待ち合わせにも時間があったから、分かるところまで案内をした。

「あぁ、袋の底が破れそうですね」
ご婦人が買い物されたビニル袋が、何かにひっかかったようで、少し裂けていた。
「これ、良かったら使ってください。後は捨てていただいていいですから」
私はエコバッグを鞄から取り出し、ご婦人に渡した。
「あら、いいのかしら」
「はい、使ってください。それと、ここを真っ直ぐに行けば左手にありますから」
「何から何までご親切にありがとうございました。助かりました」
ご婦人は頭を下げて、目的地へと歩いて行った。
私はご婦人を少し見送った後、来た道を戻った。

中に入るとまだ佐野さんは来てないようで、ほっとして席に座って待っていた。
さっきのご婦人は無事着いたかなぁ。
「ごめんね、お待たせ」
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