愛するあなたへ〜blue roseを私にください
次の週の金曜日、出張から帰ってくると、もう日比野さんは退社していた。
「佐野さん、日比野さんは、もう帰ったんだね」
「えぇ、曽根くんと一緒に帰りましたよ。どこに行こうかって話してたから、一緒に食事に行ったんじゃないですか?この間行く予定だった日、社長に仕事を頼まれて行けなかったようだから、社長の外出の日を選んだんですね」
佐野さんは何だか意味を含んだ言葉で俺に説明した。
「そう、仲良くていいね」
そう言って、社長室に戻った。

2人で食事か・・・
同じ年頃だから話も弾むだろう。
俺に気を使っても、曽根には気を使わないだろうし。
そもそも、日比野さんには彼氏がいないのか?
何故か会社に戻ってから彼女の事ばかり考えていた。
集中出来ない。今日は帰ろう。

車を走らせていると、2人の事が頭に浮かぶ。
彼女と会える訳でもないのに、家の方向に向かっていた。
どこの部屋なのかも知らないのに、マンションの前まで来てしまった。

「何やってんだ、俺」
車をUターンさせると、向こうから女性が歩いて来る。
「日比野さん・・・」
歌でも歌っているかのように楽しそうだ。
俺はスピードを上げて、そのまま彼女の横を通り過ぎた。
彼女の様子から、今日の曽根との食事は楽しかったんだろう。
家に帰る気持ちにもなれず、そのまま会社へと戻った。
社長室に入り、ソファに腰掛け、ふと左手の指輪を見つめた。
< 93 / 110 >

この作品をシェア

pagetop