この恋は、『悪』くない。

「この部屋さ
アメが来る前は
母さんのピアノがあったんだ」



「お母さんピアノ弾けるんだね」



「あぁ…
沙和も弾けるよな
合唱コンクールで弾いてたもんな」



「覚えてるの?
もぉ、ずっと弾いてないな…」



「うん、覚えてるよ
懐かしいな…」



樽崎くんは

遠い目をした



この目

何度か見た



懐かしいな…



樽崎くんは

ピアノを弾いてるお母さんを

思い出してるのかな?



窓際に目を細めるアメがいた



「日当たりが良くて
アメのお気に入りの場所だね」



「オレは
あんまり好きじゃなかった
この部屋

母さん亡くなってから
ひとりじゃこの部屋に入れなくなって…

でもアメが入りたがるから…」



「きっとアメは
樽崎くんをここに
連れて来たかったんじゃない?

お母さんのこと忘れないで…って」



「そーかな…?」



「大切なお母さんの部屋
私が、使ってもいいの?」



「うん…
沙和がいたら
もっと来たくなるから…

なんて…
この前も言ったけど
襲ったりしねーから…それは心配するな」



笑いながら樽崎くんは

私の頭に大きな手を置いた



頭の天辺からドキドキする



間違っても襲われないって

言われなくてもわかってるよ



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