この恋は、『悪』くない。

「おはよー
今日、会社の飲み会があって
少し遅くなるね」



「はーぁ…はよー…
 ん、わかった…
何時頃?」



樽崎くんは眠そうに

髪を整えながらあくびをした



「んー、何時かな?
なるべく早く帰るね」



「朝帰り?」



「朝帰りなんか、しないよ!」



それは

樽崎くんでしょ



「うん、まぁ、気を付けて…
あ、ここ、門限あんの知ってた?」



「え?そーなの?知らなかった
何時?」



「ブハハハハ…
ウソ、門限なんてねーよ」



「なんだ…」



「でも、遅くなると心配だから…」



「大丈夫だよ
すぐ前まで外灯あるし…」



「あの人も、一緒?」



「ん?あの人?」



「同じ会社の…」



「あー、森谷さん?
うん、森谷さんの送別会なんだよ
森谷さん移動するの」



樽崎くん

まだ森谷さんのこと気にしてるんだ



「へー…そーなんだ
フ…もしかして、社内恋愛バレた?
いつの間にか、付き合ってたとか?」



「社内恋愛?
え!私と森谷さんが?
そんなわけ、ないよ!」



「じゃー、移動して、残念だったな
早く気持ち伝えとけばよかったとか後悔した?

けど、送別会を期になんかあるかもな…」



樽崎くんは

ホントに

私と森谷さんが付き合ったらいいって

思ってるのかな?



後悔なんてしてないよ



「森谷さんね
自分から移動届け出したの

だから、もぉ、そーゆーのないと思う」



あれから森谷さんとは

何もない



きっと

はっきりしない私に

愛想つかした



「へー…
もったいな…
優良物件だと思いますけどね
これ以上いい物件はなかなかありませんよ
お客様
フ…
ま、沙和の自由だけどね」



「うん…」



また

虚しくなった



優良物件を逃したからじゃなくて



私が森谷さんを選ばなかった理由は

きっと

樽崎くんなのにな…



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